臨床心理士とは、人間の心の専門家です。臨床心理学にもとづく知識やスキルを使って、人間の心の問題にアプローチします。
民間資格でありながらも知名度と信頼性が高く、活躍の場が広い仕事です。
でも「どんなところで働けるの?」「どうやったら臨床心理士になれるの?」と疑問におもうかもしれませんね。
そこでこの記事では、臨床心理士について詳しくご紹介。仕事内容や職場、資格の取り方をとことん説明していきます。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
臨床心理士とは?どんな資格?
臨床心理士とは、臨床心理学に基づいた知識や技術を使って、人間の心の問題にアプローチする「心の専門家」のこと。「公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会」で認定されている民間資格です。
臨床心理士は、さまざまな心の問題を抱く患者(クライエント)に対して、話を聞いて共感しつつ、専門知識と技術を用いることでクライエントの考えを整理し、自ら問題解決ができるようにサポートしていきます。
指示するのではなく、理解と共感を通じて「クライエント本人」の力で解決できるように促すのが仕事です。
他にも心理関係の資格として、「精神対話士」「ケアストレスカウンセラー」「臨床心理士」「認定心理士」「精神保健福祉士(PSW)」などがありますが、中でも臨床心理士は知名度と信頼性がトップクラス。
資格認定がスタートした1988年から30年たった今でも、約34000人しか臨床心理士は認定されていません。
臨床心理士は、それくらい専門性が高い資格なのです。それでは、臨床心理士はどのようなところで活躍できるのでしょうか?
臨床心理士はどんなところで働くの?
臨床心理士は、次のような分野で活躍しています。
・医療、保健
・教育
・福祉
・大学、研究所
・司法、法務、警察
・産業、労働
・私設心理相談
どんな仕事をしているか、それぞれ見ていきましょう。
医療、保健
医療や保健分野では、「精神神経科」「心療内科」「小児科」で心理相談をしています。また、リハビリテーションセンターや老人保健施設では、ケガした人や高齢者など患者本人だけでなく、家族への心理ケアも仕事です。
他にも、精神保健福祉センターでは、引きこもりやアルコール依存症、薬物依存症などの相談や、思春期相談も行います。
教育
教育分野では、「スクールカウンセラー(教育相談員、保育カウンセラー)」として文部科学省から学校に派遣されます。
不登校の子どもや集団行動が苦手な子どもに対してカウンセリングするだけでなく、その保護者への心理相談に応じることも仕事です。また、適応指導教室での指導もします。
福祉
福祉分野では、とくにたくさんの臨床心理士が活躍しています。
例えば、児童相談所や市役所の子育て窓口で、発達や子育ての相談に応じます。他にも、障がいをもった人に対して療育を行うことも。また、老人ホームで高齢者がストレスなく過ごせているか、メンタルヘルスを確認します。虐待やDVの被害にあった人に対して、心理相談に乗るのも仕事です。
女性相談センター、DV相談支援センター、婦人保護施設、母子生活支援施設、
特別養護老人ホーム、養護老人ホーム
大学、研究所
大学や研究所では臨床心理学の研究をしたり、臨床心理職の養成をします。また、学生相談室や臨床心理センターも併設されていることが多いので、学生や地域の人の心理相談に応じるのも仕事です。
司法、法務省、警察関係機関
司法関係機関では、家庭裁判所で少年事件や離婚訴訟などの家事事件に「調査官」として勤務します。法務省関係機関では、刑務所や少年院でカウンセリングをしたり、集団療法を実施するのが仕事です。
警察では、少年非行についての相談を受けたり、被害者への心の支援も行います。
産業、労働
産業や労働の分野では、会社のメンタルヘルス対策についてアドバイスします。過労やセクハラ、パワハラが問題となっている今、心の専門家である臨床心理士が活躍できる新しい仕事です。
私設心理相談
会社や公立機関で働く以外にも、自分で心理相談機関を運営する臨床心理士もいます。メールでカウンセリングを行う人もいれば、家に訪問してカウンセリングする人もいるなど、その形はさまざまです。
保育士が臨床心理士の資格を取得するメリット
それでは、保育士が臨床心理士の資格を取るメリットについて、見ていきましょう。
1.メンタルケアに関する知識が身につく
まずは、メンタルケアについての知識が身につくことです。
ストレスの多い現代社会では、大人だけでなく子どもたちも、さまざまな心の問題を抱えています。そのため、保育士が臨床心理士の資格を取れば、ストレスを抱える子どもたちの問題を解決する手助けができるようになるのです。
2.幅広い分野で活躍できる
もう一つのメリットは、幅広い分野で活躍できることでしょう。
臨床心理になれば、スクールカウンセラーとして派遣されたり、医療保健分野や福祉分野、労働産業分野でも活動できるようになります。
心の専門家としての信頼性が高い資格だからこそ、求められる職場が多い臨床心理士。ニーズが高い資格なので、持っておけば将来の仕事に困ることはないでしょう。
それでは、臨床心理士になるためにはどうすればいいのでしょうか?
臨床心理士の資格を取るには
臨床心理士の資格を取るには、次の2つの条件を満たさなくてはいけません。
・指定大学院(1種・2種)、または専門職大学院を修了する
・認定試験(筆記試験と口述面接)に合格する
認定試験の合格率は60%ほどなので、決して難関というわけではありません。しかし、認定試験を受けるためには、大学院を修了することが絶対条件です。
大学院には、次のような種類があります。
・指定大学院1種:修了すれば受験可能
・指定大学院2種:修了し、かつ1年以上の実務経験で受験可能
・専門職大学院:修了すれば受験可能(かつ筆記試験が一部免除される)
もし、仕事と両立しながら受験を目指すのであれば、通信制の大学院に入学するという方法があります。
しかし、心理系の大学院の中で、臨床心理士を養成できるところはほんの一部。通信制はさらに少ないので、それだけ競争も厳しくなります。また、基本的に大学院は2年制ですが、通信制大学院では3年制のところもあるので注意しましょう。
詳しい学校名が知りたい方は、こちらのページを読んでみてください。
http://fjcbcp.or.jp/wp/wp-content/uploads/2014/03/daigakuin-ichiran-31.pdf
また、大学院に入るには必ず「大学」を卒業していないといけません。短期大学や専門学校を卒業しても大学院には入学できないので、まずは大学に入ることからスタートです。
そのため、臨床心理士になるには、次のようにお金がかかります。
・大学卒ではない場合:約320万円(6年~7年)
・大学卒の場合:約220万円(2年~3年)
受験資格を得て、試験に合格すれば臨床心理士と認定されます。試験に合格するよりも、まず受験資格を得ることの方が難しい資格でしょう。
まとめ
臨床心理士について説明してきました。
臨床心理士は、心理系の資格の中でトップクラスの知名度と信頼性がある資格です。ただし、受験資格を得るまでが難しいでしょう。
その分、取得すればさまざまな分野で活躍できます。
「人の心に携わる仕事をしたい」「心の専門家になりたい」という方は、ぜひ目指してくださいね。