保育士の気付きが子どもを救う!虐待の兆候とサイン、対処法

「何だか様子がおかしい…」「あれ、変わったところをケガしてるな…」

保育士は、毎日長い時間子どもたちと接します。そのため、子どもの小さな異変に気づくことで、家での虐待を発見するという重要な役割もあるのです。実際に、「何かおかしいな」と保育士が小さな違和感を覚えたことで、子どもを救ったということも。

とはいっても、「どこからが虐待なのか判断できない」「まだ、虐待かもという疑惑の状態なのに報告してもいいのかな」「報告したら、逆恨みとかされないかしら…」と心配かもしれませんね。

そこでこの記事では、保育士が虐待のサインに気づくためのポイントとその対処法について、とことん解説していきます。

ぜひ、お仕事に活かしてくださいね。

子どもに対する虐待は4種類ある

子どもに対する虐待は、1つではありません。虐待の内容から、大きく次の4種類に分けられます。
4種類の虐待とその内容の一覧表

厚生労働省によると、平成28年度に児童相談所が対応した虐待相談は、12万2578件。とくに心理的虐待がもっとも多く、全体の約51%を占めています。また、虐待が原因で亡くなった子どもの数は84人。

今は、子どもへの虐待に対する意識も少しずつ上がっています。それでも誰にも気づかれずに、助けられなかった子どもたちもいるのです。

見逃さないで!虐待のサインは、子どもか保護者の様子から

子どもたちを救うためには、「虐待のサイン」を見逃さないことが大切。そして虐待のサインは、子どもや保護者の様子から予測できます。

子どもだけでなく、親とも関わる保育士だからこそ、虐待のサインについて知っておきましょう。

ここからは、子どもと保護者のそれぞれが出す虐待のサインについて紹介します。

子どもが出すサイン

大きな音が苦手で耳をふさいでいる男の子
まずは、虐待を受けている子どもはどのようなサインを出しているのか見ていきましょう。

不自然なケガ

子どもに次のような不自然なケガがあったときは、要注意です。

  • おなかや背中、腕(二の腕や内側)、太もも、首や目の周りなどケガしにくい部位の傷
  • 棒で叩いたような線状のアザ、傷
  • アイロンやタバコを押しつけたようなやけど
  • 性器や肛門の周りの傷
  • 何度もケガしている
  • 明らかに治療が必要なケガなのに、放置

また、不自然なケガについて子どもや保護者にたずねたとき、次のような様子が見られた場合も注意しましょう。

・親と子どもの説明が一致しない(親:家の階段でころんだ、子ども:外でぶつけた)
・時間がたつと全く違う説明をする

虐待を隠してウソをついたり、ごまかしているかもしれません。

発達や発育の遅れ

子どもの体や知能の発達に遅れが出ているときも、注意しましょう。

身長や体重など、体の発育が明らかに遅いとき、保護者から十分な食事をもらえていない可能性があるからです。栄養不足や虐待によるストレスを受けると、「成長ホルモン」が低下していることも。

また、保護者がネグレクトで子どものことを無視し続けると、知能の発達に遅れが見られる傾向があります。とくに「言葉の発達」に影響が出やすいので、注意して見るようにしましょう。

態度やしぐさの不自然さ

  • 無気力、無反応、無表情
  • 保育士を強く拒否したと思いきや、ベタベタ甘えたりする
  • 体に触れられると身構えたり、嫌がる
  • 親に怯える、家に帰るのを嫌がる
  • 自分より弱い子どもに威圧的。暴力をふるう
  • 大人の動きをじっと目で追う、警戒心が強い

身なりや様子の違和感

・体や服が清潔でない(着替えやお風呂に入っていない)
・着替えをしたり、裸になるのを不安がる
・給食の残りをほしがるなど、食べ物に執着する

保護者が出すサイン

子育てによる不安から、精神的に参りそうになっている女性
保護者の様子から虐待のサインを読み取るときは、次の4つのポイントに注意しておきましょう。

  • 子どもへの態度
  • 保護者自身の態度
  • 他の人への態度
  • 保護者が置かれている状況

それぞれ具体的に紹介します。

子どもへの態度

朝の見送りや帰りのお迎え時間に、保護者が次のような態度を子どもにとっていたら注意しましょう。

  • 乱暴で、威圧的な接し方をしている
  • 子どもに拒否的で、冷たくする
  • 子どもへの体罰を、良いものとして認めている
  • 病気やケガをしても、治療をしない(病院に連れて行かない)
  • 子どものケガや様子について、説明がころころ変わる
  • 子どもに無関心、または過度に依存している

保護者自身の態度

保護者自身の態度にも、虐待のサインが現れることがあります。

  • 「○○された」という被害者意識が強い
  • 感情的になりやすく、精神的に不安定
  • お酒などアルコール依存や、精神の疾患が疑われる
  • 子どもの様子に関心がない

他の人に対する態度

保育士や友達など、他の人に次のような態度をとっていないか注意しましょう。

  • 子どもや家族について、話すのを嫌がる
  • 疑いやすく、攻撃的なため、人間関係をなかなか築けない
  • 家庭を訪問したとき部屋がいつも散らかっている

このように虐待には、子どもや保護者からいくつかサインが出ています。それでは、これら「虐待のサイン」に気づいたら、どのように対応したら良いのでしょうか?

もしかして虐待?と思ったら

子どもが虐待を受けているかもしれないと疑っているが、どうすればいいか分からず悩む女性保育士
虐待のサインに気づいた後は、保育園全体でサポートすることが大切です。

保育園全体で、子どもと保護者それぞれの対応方法を考えていきます。具体的に、まず何からすればいいのか、どんな対応をすればよいのか見ていきましょう。

すぐに記録して、園に報告しよう

虐待に気づいたら、すぐに状況を記録して保育園に報告しましょう。記録があると説得力が増すので、スムーズに報告できます。また、自分だけでなく、同僚や主任保育士も知ることで、保育園全体で子どもや保護者への対応を共有できます。

まずは、ケガや子どもの様子など、不自然だと思ったことを記録しておきましょう。発見した日付とともに、傷の場所や状態を簡単な絵にしておくにも方法の一つ。

虐待は、保育士1人で解決できるものではありません。状況をしっかり記録してから、保育園全体で対応を考えていきましょう。

子どもは安心させよう

子どもには、安心感を与えてあげましょう。「先生は味方かな?」「保育園では叩かれないかな」という不安があるままでは、子どもも虐待のことを話しにくいもの。

そこで次のような対応で、まずは子どもを安心させてあげましょう。

・「先生は味方だよ」「あなたを守るよ」と伝える
・事実確認をするときは聞き出すのではなく、子どもが話しやすい質問をする
(×:誰が叩いたの? ○:このケガはどうしたの?)
・他の子どもがいないところで、1人か2人でゆっくり話す
 (大人だけで取り囲まない)
・明らかなウソを子どもが言っても追及しない
・子どもから「虐待がある」と告白されたら、子どもの気持ちに共感しながら話してくれたことを感謝する(辛かったね。話してくれて、ありがとう)
・「先生に話したことで、あなたが叱られることはないからね」とはっきり伝える

子どもにとって、虐待のことを誰かに話すのは勇気がいるもの。まずは保育園に行きやすいように、保育士や保育園は子どもを守る存在だと安心感を伝えましょう。

保護者には、共感していることを伝えよう

保護者と接するときは、気持ちに共感していることを伝えてあげましょう。共感的な態度で接することで、保護者も心を許して悩みを話しやすくなります。

子どもを虐待する背景には、子育ての不安から悩みを抱えていることも多いです。具体的には、次のようなことも原因として考えられます。

  • 夫婦の仲や、義両親との関係が良くない
  • 保護者が失業中で、経済的に苦しい
  • 親しい友人や家族、親戚が近くにいない

このように「このまま子育てできるかな」という辛さや孤立のしんどさを認めて、がんばってきたことを評価してあげましょう。

「子育てでも家庭のことでも、なんでも相談してほしい」とメッセージを伝えることで、保護者の気持ちを楽にしてあげるのが大切です。

虐待は「疑い」の段階で、児童相談所に通告することが大切

子どもと家庭を助けるために、一致団結している保育士たち
保育士や保育園は、「保護者から子どもへの虐待がある」と判断はできません。最終的に虐待があるかどうか判断するのは、児童相談所だからです。

しかし、児童相談所は保育園ほど毎日近くで子どもたちを見ているわけではありません。だからこそ、虐待は「…もしかして…」という疑いの段階で児童相談所に通告するのが大切なのです。

保育施設として児童相談所に通告したとき、児童相談所から「保育園から虐待を通告しました」と保護者に伝えてほしいという協力を依頼されることがあります。

この対応は、園長などトップの人が行うと良いでしょう。そのとき、可能であれば次の3つを伝えられるとベストです。

  • 法律のもと、虐待の疑いがあれば、通告する義務があること
  • 児童相談所は、子どもと家族を援助する機関であること
  • 保育所は、今後も子どもと家庭を支援していくこと

もし保育園に報告したにも関わらず、「保護者とのトラブルが怖いから」という理由で何も対策してくれない場合、1人の保育士として通告することもできます。

匿名での通告も可能なので、安心してください。

また、中には「通告」という言葉が「密告」のように強く感じられて、「電話するのをためらう…」という人もいるかもしれませんね。通告は、「支援が必要な子どもがいるよ」という連絡のようなもの。虐待の密告ではありません。

子育てに不安を感じる保護者を支援し、子どもの安全を優先するための手段と考えておきましょう。

児童相談所の連絡先は、以下の通りです。

・児童相談所全国共通ダイヤル:近くの児童相談所に電話をつないでくれる総合窓口
0570-064-000

全国児童相談所一覧(厚生労働省)

まとめ

腕白な子どもたちと笑顔でふれあう女性
保育士が虐待に気づくためのポイントや、対処法について紹介してきました。

虐待は、子どもの体だけでなく心も深く傷つけます。そのため、「虐待かも…?」と疑ったとき、児童相談所に通告することが、子どもを守ることにつながるのです。

また、保育士も「1人で抱え込まない」ことが大切。デリケートな対応が求められるからこそ、チームプレーで子どもたちを守っていきましょう。

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