「いつの間に?!」大人が予想しなかったものを、口に入れてしまう子どもたち。とくに小さな子どもは口のコントロールができず、そのまま飲み込んでしまうことも…!!
誤飲してしまったときに一番大切なことは、「間違った知識で対応しない」ということです。もちろん飲み込んだものをはき出させて、気道を開けることも窒息を防ぐために必要なこと。しかし、飲み込んだものの一部には、はき出してはいけないものもあります。誤った知識で対処すると大きな事故につながることも。
そこでここでは、子どもが誤飲してしまったときの対処法を、誤飲したもの別にご紹介。救急車を呼ぶべき状態かどうか判断するポイントや予防法もご紹介します。
目次
意識がないときは、とにかく救急車「119」!
まず子どもが誤飲したとき、次のような症状が1つでも出てきたら、すぐに救急車を呼びましょう。子どもの命に関わります。
これらの症状が現れないようであれば、救急車を呼ばずに様子を見ても大丈夫です。しかし「元気そうだけど、やっぱり心配…」というときは、どうすればいいのでしょうか?
元気そうなときでも心配だったら、#8000
子どもが誤飲をしても、次のような状態ならばすぐに救急車を呼ぶ必要はありません。
しかし、「元気そうだけど、やっぱり心配だな…」「何も対処しなくていいのかな?」と不安になるかもしれませんね。そんなときは、救急車ではなく「#8000」に電話をかけましょう。これは、小児救急電話相談の番号です。電話をかけたら、今いる自治体の相談窓口につながります。医療行為はできませんが、小児科医や看護師に相談したり、どうしたらいいかアドバイスしてもらえます。
また、日本中毒情報センター(中毒110番)でも応急処置の方法を聞くことが可能です。タバコ、家庭用品などの化学物質や医薬品、動植物の毒などによって起こる急性中毒に対応しています。電話番号は次の通りです。
大阪とタバコ専用電話は365日24時間で対応していますが、つくばはAM9時~PM9時までしか対応していないので注意しましょう。
このように、緊急性があるかどうかで電話する機関は変わります。しかしあわてているときほど、パニックになってどのように対応するべきか頭から飛んで行ってしまうもの。緊急事態に落ち着いて対応するためには、保育士が誤飲の対処法を知っていなければいけません。ここからは、保育士が知っておくべき応急処置について紹介します。
吐かせたらダメなものが分かる!誤飲物別の応急処置一覧
ここからは、誤飲したもの別の応急処置について紹介します。
基本的に、子どもが誤飲したときにするべきことは次の2つです。
ただし、誤飲したものによって、吐かせるべきかどうかや牛乳や水を飲ませていいのか変わってきます。間違った対応をすると、命に関わることも。
次の表を見て、チェックしましょう。
防虫剤、ナフタリン、しょうのう
防虫剤やナフタリン、しょうのうを誤飲したときは、吐かせましょう。水は飲ませても大丈夫ですが、牛乳は消化管からの吸収を促すため飲ませてはいけません。
灯油、シンナー、ガソリン
灯油、シンナーやガソリンを誤飲したときは、吐かせても、飲ませてもいけません。肺に入ることのないように、そのまま医療機関へ行きましょう。
殺虫剤、農薬
殺虫剤や農薬を誤飲したときも、何もせず医療機関に向かいましょう。どちらも毒性が非常に強いため、吐かせても、飲ませてもいけません。
マニキュア、除光液
マニキュア、除光液を誤飲したときは、吐かせても、飲ませてもいけません。毒性が強いため、何もせずそのまま医療機関へ行きましょう。
パイプ詰まり取り、カビ取り剤、漂白剤
パイプ詰まり取り、カビ取り剤や漂白剤は、絶対に吐かせてはいけません。吐かせると体の中の粘膜がただれてしまいます。水や牛乳を飲ませて、毒性を薄め医療機関へ向かいましょう。
ボタン電池、乾電池
ボタン電池や乾電池を誤飲したときは、何もせずに医療機関へ行きましょう。どちらもとても小さいので、無理やり吐き出させたり、水や牛乳を飲ませると食道に引っかかることがあります。
画びょう、釘
画びょうや釘を飲み込んだときも、そのまま医療機関へ行きましょう。無理に体を動かすと食道や気管を傷つけることがあります。
ホウ酸だんご
ホウ酸だんごは、中毒になる危険性が高いです。すぐに水か牛乳を飲ませて毒を薄めるか、吐き出させて医療機関へ行きましょう。
医薬品
医薬品を飲み込んだときは、基本的に吐かせても水や牛乳を飲ませてもかまいません。ただし、一旦病院に対処法を問い合わせたうえで対応しましょう。
タバコ
タバコを誤飲したときは、とにかく吐き出させましょう。水や牛乳を飲ませると、ニコチンが溶け出すため大変危険です。吐き出させたら医療機関へ向かいましょう。
紙おむつ、ティッシュ
紙おむつやティッシュを飲み込んだときは、毒性はほとんどないので心配はありません。ただし、大量に飲み込んだときや水分をとると、のどに詰まらせて窒息することがあります。心配なときはやさしく吐き出させるようにしましょう。
アルコール、エタノールを含むもの
アルコールやエタノールを含んだものは、中毒になる可能性が高いです。水や牛乳を飲ませて毒を薄めるか、吐かせて医療機関へ向かいましょう。
カフェイン
カフェインは大量に飲み込んだとき、中毒になることがあります。水や牛乳を飲ませるか、吐かせて医療機関へ行きましょう。
シャンプー、リンス、食器洗い洗剤
シャンプーやリンス、食器洗い洗剤を飲み込んでも、中毒のおそれはありません。しかし、大量に飲んでしまったら、吐かせて医療機関へ向かいましょう。
硬貨、ボタン、ビーズ
硬貨やボタン、ビーズなど小さいものについては、完全に飲み込んでしまったときは様子を見ます。ただし、のどに詰まらせた場合は吐き出させて医療機関へ行きましょう。
このように、誤飲したものによって対処法は違ってきます。さらに、吐かせるときも正しい方法を知らなかったら、窒息のリスクを高めることに。ここからは、吐かせるときの方法や気をつけるポイントを紹介します。
吐かせるときの方法
吐かせるときは、子ども1歳児以下かそうでないかで方法が少し変わってきます。
子どもが1歳以下のとき
子どもが1歳以下のときは、背部叩打法で吐かせましょう。
手で子どもの頭と首を固定して気道を確保します。保育士の前腕に体をまたがせて、うつぶせの状態にします。顔が下向きになるよう支えながら、背中の真ん中を平手で4~5回叩きましょう。
子どもが自力で吐こうとしたら、一旦様子を見ます。
子どもが1歳以上の場合
子どもが1歳以上だったとき、吐かせる方法は次の2つです。
立ちヒザなどで保育士の太ももが、子どものみぞおちを圧迫するようにします。子どもの頭を下げた状態で、背中の真ん中を平手で4回~5回叩きましょう。
子どもの背中を保育士の腕に乗せて、子どもの後頭部を支えます。中指と薬指で胸の真ん中を数回力強く圧迫しましょう。
どちらも子どもが自力で吐こうとしたら、一旦様子を見てください。
実際にどのように行うのか動画を用意したので、参考にしてみてください。
ちょっと待って!吐かせてはいけない条件
もし、誤飲した子どもに次の症状が現れているときは、吐かせないようにしましょう。
意識がもうろうとしているときや、けいれんを起こしているときに吐かせようとすると、吐いたものがのどに詰まり窒息してしまうことがあります。「意識があるのかよく分からない」「不整脈かどうか分からない」など、判断に迷うときは吐かせず、すぐ医療機関へ向かいましょう。
救急車は渋滞に引っかかることもあり、すぐに来てくれるとは限りません。そのため、現場にいる保育士も基本的な応急処置を知ってくことがとても大切です。
ここからは誤飲を防ぐために、誤飲の事例や原因から、誤飲を予防する方法を紹介していきます。
誤飲が原因で起こった事件
厚生労働省によると、2016年に起きた子どもの誤飲は、医薬品が1番多かったと報告されています。さらに続いて、タバコの誤飲が多かったとのこと。
しかし、保育園ではタバコは教室に置かれていませんよね。それでは保育園ではどのようなものを誤飲してしまうのでしょうか?
東京都によると、次のような事例が報告されています。
紙やビニール
・貼っていたシールをはがして飲み込み、息ができなくなった。
・破れて小さくなったビニールを飲み込み、のどに引っかかった。
おもちゃ
・ミニカーのサイレン部分が外れて、飲み込んだ。
電池
・おもちゃの電池を交換していたら、机の上に置いた予備電池を口の中に入れてしまった。
薬品、化粧品
・チューブの軟膏を折り曲げて、破れた部分から出てきた薬をなめた。
保育園では、紙やビニール、そしておもちゃを飲み込んでしまうケースが多いようです。とはいえ、昔に比べればおもちゃも誤飲しにくいように設計されてきています。それなのになぜ、誤飲はなくならないのでしょうか?
どうして起こる?誤飲の主な原因
誤飲が起こりやすいのは、子どもの発達段階が関係しています。
誤飲が起こりやすい0歳~2歳の時期は、触感や視覚が未発達。そのため、手に触れたものを1番神経が敏感な「舌」でなめて、「これは何なんだろう?」と確認しようとするのです。とくに好奇心の強さから、女の子よりも男の子の方が誤飲しやすい傾向にあることが明らかにされています。
子どもはとにかく何でも口に入れようとしてしまうのは、いわば人間が発達するための本能。そのため「3歳までは誤飲は起こる」と考えておきましょう。
それでは、誤飲を防ぐために保育士はどのようなことに気をつけるべきなのでしょうか?
誤飲を防ぐ方法
誤飲を防ぐために保育士ができるのは、次の2つです。
順番に説明していきますね。
床にモノを置かないようにしよう
誤飲を防ぐために、床にモノを置かないようにしましょう。
子どもは大人より目線が低いもの。そのため、床に落ちているモノにもすぐ手が届いてしまいます。
まず、口に入りそうなものは、子どもの手が届かないところに置くようにしましょう。またボタンやゴミが床に落ちてもすぐに気づけるように、床はいつも見通しよくきれいにしておきましょう。
他にもボタンやビーズなどがついていないエプロンをするという方法もあります。床に小さなものを落としたりしないように、日ごろから気をつけましょう。
教室にモノを置くときは、誤飲チェッカーで大きさを確認しよう
教室に何かモノを置くときは、設置する前に「誤飲チェッカー」で大きさを確認しましょう。
誤飲チェッカーとは、子どもの誤飲や窒息を防ぐために開発されたもの。3歳の子どもが口を開けたときの最大口径「直径:39mm、奥行き:51mm」の大きさをした、アクリル製の円筒型の器具です。
この誤飲チェッカーに隠れてしまうモノは、子どもが飲み込んでしまう大きさになります。ただし、大きさだけでなく、ツルツルした形のおもちゃも子どもは飲み込みやすいので、教室に置かないようにしましょう。
大人には「この大きさは子どもにとって危険だ!」とすぐに判断しにくいもの。誤飲チェッカーを使って、危険かどうか確認してから教室に置くようにすれば、誤飲を未然に防げます。
まとめ
誤飲の対処法から、誤飲の原因や予防方法について紹介してきました。
子どもは発達段階のため、口で何でも確認しようとしてしまいます。保育園であれば、タバコや薬品を口にする危険性は少ないものの、おもちゃや紙、ビニールは子どもたちの近くにたくさんあります。
まずは子どもの目線に近い「床」にものを置かないようにしましょう。もし誤飲してしまったとき、応急処置を知っていれば命を失うリスクを下げることができます。ただし、正しい知識でないと逆に危険です。
子どもたちの命を守れるように、ぜひこの記事を参考にしてくださいね。