「これってセクハラ?」「でも私の勘違いかも」と悩んでいませんか?
実は、セクハラやパワハラなどのハラスメントを受けて、退職した保育士はたくさんいます。ハラスメントは保育士の転職理由で挙げる人も多く、問題になっているのです。
とくに、保育園は閉鎖的で小さな世界。セクハラやパワハラなどのハラスメントを受けても、誰にも相談できずに「私が悪いんだ」と一人で抱え込んでしまう保育士もいます。
ひどくなると、心の病気になってしまうことも。そうならないためにも、ハラスメントとはどのようなものか知り、対処法を学んでおくことが大切です。
この記事では、保育園で起こりやすいハラスメントについて詳しく解説。さらに、実際にハラスメントを受けたとき、どのように対処すればいいのかも紹介します。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
保育園で起こりやすいハラスメントは、4種類
保育園で起こりやすいハラスメントには、次の4種類があります。
・モラハラ
・セクハラ
・マタハラ
それぞれどういうものなのか、詳しく見ていきましょう。
パワハラ(パワーハラスメント)
地位や権力を利用して相手を不快にさせる行為のこと。業務の範囲を超えて、相手に精神的苦痛や身体的苦痛を与えます。上司から部下だけでなく、部下から上司、同僚間、取引先からのものも含まれるのがポイントです。
モラハラ(モラルハラスメント)
暴力は使わず、言葉や態度で嫌がらせをすること。精神的ないじめを広く指します。職場で行われるモラハラのことを、「パワハラ」と捉えることも。
セクハラ(セクシャルハラスメント)
性的な嫌がらせのこと。性的、性差別的な発言や行動を指します。異性間だけでなく、同性間でも発生するのがポイントです。立場の強い人から受けることが多いため、「パワハラ」と捉えられることも。
マタハラ(マタニティハラスメント)
妊娠や出産に関する嫌がらせのこと。妊婦に直接嫌がらせをするだけでなく、妊娠を理由に自主退職を強要したり、妊娠しないことを雇用条件にする行為もマタハラに含まれます。男性からだけでなく、女性からも受けることも。セクハラの一つと捉えられることもあるのがポイントです。
これら4つのハラスメントは、はっきりと区切られるわけではありません。パワハラの概念がもっとも大きく、その中に他のハラスメントも含んでいます。そのため、「これはパワハラ?それともセクハラ?どっち?」と混乱してしまう人もいますが、はっきりとした区切りはないと覚えておきましょう。
保育士が経験したハラスメントの実態
それでは、実際に保育士が体験したハラスメントの実態について見てみましょう。
パワハラやモラハラ:園長や主任から、理不尽な対応を受ける
新人で入った頃、園長がたいした理由もなく叱責する人でした。それも「どうすればよろしいですか?」と聞けば「いちいち聞くな」と答えたり、自分で判断すれば「勝手に判断するな!」と怒られる理不尽なもの。ときに暴言を吐かれたり、ののしられることもありました。
とくに子どもたちや、同僚の前でくり返し行われるのがとても辛かったです。主任に相談しても「あなたのことを思って言っているのよ」と園長を正当化して、かばってくれませんでした。3ヶ月後には精神的に参ってしまい、家から出られなくなったのです。
パワハラ・モラハラ:雑務や仕事を押しつけられる
私が担当するクラスは複数担任だったのですが、ペアの保育士Aさんが仕事を全て私に押しつける人でした。事務作業や部屋の飾りつけ、イベントの計画書など、挙げるとキリがありません。
さらに、Aさんは「新人や年齢の若い保育士がめんどくさいことをやって当然!」と思うタイプ。そのため「複数担任なのに、これはおかしくないですか?」と私が言えば、すかさず「私が若い頃はもっと苦労してたのよ」と一方的に話を終わらせるのです。
それでも私が反論していると、「そんな態度をとるなら、園長先生に報告します!然るべき処分を下してもらうから覚悟しなさい」と脅してくる始末。
公立保育園だったため、赴任したばかりの園長よりも長く勤めているAさん。園長先生より力を持っていたため、なす術がありませんでした。
セクハラ:園長や主任から体を触られる、交際を迫られる
園長に体を触られました。多くの保育園と同じように、うちの保育園も保育士のほとんどが女性で、園長だけ男性です。たまたま2人になったとき、となりに座って太ももを触ってきました。
すぐに同僚が戻ってきたので、その日は何もありませんでしたが、帰るときに待ち伏せされて交際を迫られたこともあります。誰にも目撃されていないので証拠もないし、園のトップである園長が相手なので、誰に助けを求めたら良いのか分かりません…。
我慢するしかないのかなと思っています。
セクハラ:同じ女性の先輩保育士から「モテるのは今だけ」「男性経験は?」
同じ女性である先輩保育士のAさんから、セクハラを受けていました。やたらと、「彼氏はいるの?」「男性経験は何人?」と聞いてくるのです。
「何でそんなこと聞くんですか?」「答えたくありません」と言うと、「あの子は愛想が悪い」「世間話もできない」と他の同僚に言いふらされてしまいました。
マタハラ:妊娠しないように言ってくる
同僚のBさんが結婚しました。すると、園長に呼び出されて、こう言われたそうです。「うちの保育園は人が足りてないんだ。分かってるよね?」「大人として、周りに気をつかうように。自制しなさい」
妊娠したら休まないといけないので、人が足りなくなるのは分かっています。それでもまさか、「暗に念押しするなんて…」とあきれてしまいました。
マタハラ:妊娠中、体調を崩すと責められる
妊娠を同僚に公表したら、みんなの反応が冷たくなりました。無理したらいけない時期と知っていても、わざと負担が大きい仕事を回してくるのです。
つわりで体調が悪くなり、休みをとることが多くなると「無能」「はやく辞めればいいのに」と陰口をいわれるように…。
ストレスから流産しそうになり、保育園を辞めました。
女性だけじゃない!男性保育士が受けやすいハラスメント
女性がたくさんいる保育園ですが、数少ない男性保育士も次のようなハラスメントを経験しています。
パワハラ・モラハラ:「男性でしょ?」と力仕事を全て任される
自分と園長以外、全員女性という保育園で働いていました。待望の男性保育士とのことで、とても歓迎されたのを覚えています。
しかし、その理由は「力仕事」。「男性だからいけるでしょ?」と2人で持つような荷物を、僕一人で任されるのです。
「お茶を入れるのは女性の仕事」というフレーズが差別と言われるのと同じように、「力仕事は男性の仕事」というのは、差別ではないのでしょうか…
セクハラ:保護者から「女の子のオムツを替えないで」
保育園の同僚には恵まれていましたが、一部の保護者から冷たい目で見られることがありました。とくに辛かったのは、担当するクラスの女の子の保護者から、「○○先生にうちの子のオムツを替えさせないでください」というクレームが入ったこと。
ウワサでは聞いたことあったけれど、かなりショックでした。僕、そんなに危険人物に思われているのかなあ…
ハラスメントは、心をむしばむ
このように園長や主任などの上の立場の人からだけでなく、同僚や保護者からもハラスメントを受けることがあります。
ハラスメントで一番ダメージを受けるのは、精神です。さらに精神的なダメージがたまっていくと、体の調子にも影響が出てきます。とくに、上の立場の人からのハラスメントを受けた保育士は、「園長にここまで言わせてしまった自分が悪い」と自分を責めてしまいがち。我慢しすぎて、ノイローゼやうつ病などの病気になってしまう保育士も少なくありません。
保育士自身が健康に働き続けるためにも、ハラスメントを受けたときの対処法を知っておくことが大切なのです。
最後に、ハラスメントを受けたときにどうするべきか、対処法を紹介していきます。
もしハラスメントを受けたら??
ハラスメントを受けてしまったら、次のように対応していきましょう。
まずは、自分の心身を第一に考える
ハラスメントを受けたときは、まず第一に自分の心と体のことを第一に考えましょう。保育士は責任感が強い方が多いので、「子どもがかわいそう」「同僚に迷惑をかけちゃう」と責思ってしまうかもしれません。
しかし、一番大切なのはあなたの心身が健康であることです。もし心と体がボロボロになってしまったら、大切にしてきた保育に関われなくなるかもしれません。
人はお互いに迷惑をかけあうもの。これから保育士として働くためにも、無理しすぎず、まずは自分をしっかり労ってあげてください。
信頼できる相談相手を身近で探そう
次に、信頼できる相談相手を身近で探すことも大切です。人は悩みを抱えているとき、誰かに話すことでスッキリできるもの。とくに、身近にいれてくれたら「私には理解者がいる!」と心強く思えます。
例えば、同じ職場で信頼できる同僚や、学生時代の友人、同じ保育士に相談してみましょう。あなたのことをよく理解してくれる人や、知識や経験が豊富な人、客観的に状況を見ることが得意な人など、たくさん見つけておくとベストです。
主任や同僚からのハラスメントは、上の立場の人に相談しよう
主任や同僚からハラスメントを受けたときは、園長や理事長などさらに上の立場の人に相談するのも方法の一つ。
理事長や園長が信頼できる人であれば、直接相談してハラスメント辞めるように忠告してくれます。
ただし、園長からハラスメントを受けていたり、ハラスメントをしてくる同僚と園長の仲が良いときは、この方法は使えません。友人や家族など、職場の外に味方を作りましょう。
ノートを取って証拠を集めよう
ハラスメントを受けたら、どのようなことをされたのか詳しくノートに書いておきましょう。ハラスメントは、2人きりで行われることも多くあります。そのため、何も記録がないと「ハラスメントの証拠がない」と言われてしまうことも。
そこで、まずはハラスメントと捉えた言葉や行為を、日付とともにノートに書いておきましょう。とくに日記として毎日書いておくと、証拠能力が高くなるのでオススメです。
ノートの記録は誰かに相談するときだけでなく、話し合いや法的な対処をするときにも役に立ちますよ。
※ノートの代わりに録音するという方法もあります。しかし、「許可なく録音した」と証拠能力がないと否定された事例も。どうしても録音したい方は、専門家に相談してからにしましょう。
心療内科に行って、検査を受ける
ハラスメントを受けたとき、心療内科に行って検査を受けることも方法の一つ。検査の結果次第では、「ハラスメントによるストレスが原因で、精神障がいを発症した」という強い証拠にできます。
精神障がいで代表的なものは、うつ病や適応障がい、睡眠障がいです。仕事に支障をきたす障がいがあると言えば、かなりのストレスを受けていると誰でも判断できますよね。
ただし、精神障がいかどうかは素人には診断できません。まずは、精神科医で「もしかしたら心の病気かと思って…」など気軽に相談してみましょう。
このとき、「どれくらいストレスを受けていたか」と聞かれることもあるので、ハラスメントの内容を記録した日記も持って行くとスムーズに診察を受けられますよ。
公的機関に相談しよう
相手との話し合いが難しいときや、決裂してしまったときは、次の公的機関に相談しましょう。
・自治体の担当職員(公立保育園の場合):保育幼稚園課、こども保育課など
・労働問題を扱う相談サービス:総合労働相談コーナーや、全労連など
・法テラス:法律の専門家が相談に乗ってくれるサービス
労働基準監督署は、匿名での相談もできます。また、労働相談をしてくれるサービスは、全国的に展開しているので、近くにある窓口を探してみましょう。全労連では、フリーダイヤルをかけたら、地域の労働相談センターにつながります。
法テラスは、初回無料で相談してくれるのも、うれしいポイントです。積極的に相談してみましょう。
転職も方法の一つ
もし、できる限りのことをしても解決しないときは、転職を検討してみましょう。
転職先を探すときは、保育士向けの転職サービスを理揺するのがオススメです。専門のコンサルタントが転職アドバイスだけでなく、転職先の人間関係についても教えてくれます。どんな職場だったか、働いている保育士はどんな印象だったかなど、先に知れるだけでも安心できますよね。
こちらの記事で、オススメの転職サイトを紹介しているので、チェックしてみてくださいね。
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まとめ
セクハラやパワハラなど、保育士が経験しやすいハラスメントや、その対処法について紹介していきました。
ハラスメントは、自分よりも年上の人や立場が上の人から受けやすいもの。そのため、「自分が悪いんだ…」と一人で抱え込んでしまう保育士もたくさんいます。うつ病やノイローゼになる可能性も、十分あるのです。
まずは、一人で抱え込まずに信頼できる人に相談してみましょう。誰かに話すことで、自分が置かれた状況を冷静に見つめ直すことができます。
もし、どうしようもなかったら第三者機関を利用するのも方法の一つです。
ぜひこの記事を参考にして、素敵な保育士ライフを送ってくださいね。