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保育士であれば、誰でも経験する「ヒヤリハット」。あなたも子どもたちの動きや、突然の変化に「ドキッ」としたことがあるかもしれませんね。
ヒヤリハットは、子どもの命を守るためにとても大切なことです。でも「これってヒヤリハットなのかな?」「どの程度で報告して良いの?」と分からないこともあるのではないでしょうか?
そこでここでは、ヒヤリハットの事例を詳しくご紹介。それぞれの対策や、ヒヤリハットと判断するポイントも紹介します。
自分の保育園以外のヒヤリハットと対策を知れば、応用して事故防止に役立てることもできます。ぜひ、参考にしてくださいね。
目次
ヒヤリハットとは?
ヒヤリハットとは、思わず「ヒヤリ」としたり「ハッ」としたできごとを指します。一歩間違えると、大きな事故につながる可能性がある危険な場面のことです。
実は、1つの事故には300件ものヒヤリハットが潜んでいると言われています。
これは「ハインリッヒの法則」という考え方で、1件の大きな事故が起こったら、その背景に29件の軽い事故があり、さらにその背後に300件のヒヤリハットがあるというものです。
例えば、2017年度の保育施設での死亡事故は13件。これらの事故の背景には、約3900件以上のヒヤリハットが潜んでいたと考えられます。3900件もあるヒヤリハットに気づかなかった、もしくは気づいても放置してしまったために、重大な事故が起きてしまいました。
このような事故を未然に防ぐために、子どもの命を預かる保育園では、ヒヤリハットの報告がとても重要になってくるのです。
保育士のヒヤリハットで大切な3つのこと
ここでは、保育士のヒヤリハットで大切なことを3つ紹介します。
1.「子どもにとって危険か」を基準にする
「これはヒヤリハットなのかな?」と困ったら、「子どもにとって危険なことか」を基準に考えてみましょう。保育士の感覚だけを基準にしてしまうと、「危険」という感じ方に個人差が出てくるからです。そうすると、ヒヤリハットの見落としが生まれてしまいます。
保育のヒヤリハットは、子どもを主体にして判断しましょう。
2.ヒヤリハットは早めに報告しよう
ヒヤリハットと判断したら、すぐに他の職員にも報告しましょう。報告しておけば、危険性を共有できるからです。危険性を共有すれば、どこに注意するべきか分かるため、事故を格段に減らせます。
臨時で入る職員やパートさんなどにも、「目を離さない」「注意して見てほしい」ところを共有しておきましょう。
3.他の保育園で起こったヒヤリハットも知っておこう
ヒヤリハットは、なるべく多くの例を知っておくことが大切です。自分では気づかなかった危険について、知ることができます。
人は、直接目で見たり、事前に対応を知っておかないとなかなか対応できないもの。「他の保育園だから関係ない!」と切り捨てずに、「自分の保育園でも同じ事故は起こらないかしら」と事故を未然に防ぐ例として、読んでおきましょう。
ここからは、保育園で起きやすいヒヤリハットやその対策について紹介していきます。
保育園で起こりやすいヒヤリハットの例と対策
転職支援サービス会社「ウェルクス」が保育士を対象にアンケートを行ったところ、保育園で起こりやすいヒヤリハットは次のような結果になりました。
それぞれ具体的な例と対策を見ていきましょう。
転倒
すると、足がもつれて1人が転倒、それに重なる形で残りの2人も一緒に転倒した。今回はすり傷だけですんだものの、手が引っ張られることで脱臼したり、子どもたちの体重が重なることで骨折する可能性もあった。
【対策】
・子どもたちにも、脱臼しやすいから気をつけようと伝える
・腕は引っ張らないと注意する
・手をつないで走ることは、危険だと言い聞かせる
・ 手をつないだら、ゆっくりと歩くように声がけをする
衝突
・子どもが走って廊下を曲がろうとしたとき、子ども同士でぶつかった。
・荷物を運んでいると、子どもが足元に抱きついてきた。ふらついてこけそうになり、子どもにぶつからないか、イスや机に自分がぶつからないかヒヤリとした。
【対策】
・子どもたちが衝突がしやすい場所を把握して、1つの地図にしておく
・ぶつかりやすい家具の角には、クッションなどの緩衝材をつける
・足元にあるオモチャ箱やイスは、運ぶ前に片づける
・厚いジャージは避けて、子どもの存在を感じやすい服を着る
・前髪はしっかりとまとめる
遊具を使用していたときのケガ
・ブランコ中に手を離してしまい、頭から落下。口を歯で切ってしまったが、すかさず保育士が止血した。他の子どもも近づけなかったことで、大事には至らなかったが、打ち所が悪かったり、落ちた後さらにブランコで頭をぶつける危険があった。
【対策】
・想定外の遊びをしたときは、危険だと伝えてやめさせる
・遊具の点検は、日ごろから行っておく
・危険性が高い遊びをするときは、必ず近くに保育士がつく
・ブランコが動く範囲にフェンスを設置する
食物アレルギー
【対策】
・調理、教室への受け渡し、子どもへの配膳のときに、何人かで指さし確認する
・アレルギー対策の食事は、色つきの食器にするなど、見た目で分かるようにする
・子どもの名札のところにアレルギー食材を書いて、他の職員にも、事前に注意するよう求める
・アレルギー除去食を先に配る
とくに注意しなければいけないのは、「息ができなくなる」こと
とくにヒヤリハットで注意しなければいけないのは、子どもの息ができなくなることです。呼吸は、子どもの命に関わります。発見の遅れが命取りになるため、注意して子どもの様子を見ておきましょう。とくに次の3つのヒヤリハットには注意が必要です。
のどに詰まらせる
【対策】
・一口サイズで吸い込みやすい食品は、すりつぶす
・必ずそばに保育士がついて、子どもに食べさせる
・子ども一人ひとりの噛む力や飲み込む力を把握して、担当する保育士で共有しておく
睡眠時無呼吸症候群
【対策】
・ 保育士同士で連携をとり、子どもの持病を共有しておく
・ 朝の登園で、変化を見逃さない
・家庭での様子を聞き、起こりうるリスクについて把握しておく
・子どもの体調や表情、動きに変化がないか見逃さない
・昼寝のときは、コンスタントに呼吸をチェックする
ヒヤリハットの共有ができずに、起きてしまった死亡事故
最後に、ヒヤリハットの共有ができず、死亡事故を防げなかった例も紹介します。
オモチャの危険性を他の保育士にも共有しておけば、自分が目を離しても別の誰かが止められたかもしれません。
このように、小さな情報でも共有することは、事故を防ぐためにとても大切なのです。それでも、20%の保育士は自分が働いている保育園で「ヒヤリハットの共有ができていない」と感じています。
子どもを守るため、そして自分自身を守るためにも日常生活に潜むリスクを保育士全員で共有して、安全な環境を作っていくことが必要です。
まとめ
ヒヤリハットの事例や対策、そして大切さについて説明してきました。
ヒヤリハット事例を見るだけでも、子どもの動きは予想外で、目が離せないということがよく分かります。そのため、保育士がよく経験するヒヤリハットは「どんなときに起こるか分からない」と肝に銘じておくことが大切です。
元気いっぱいの子どもたちにケガはつきもの。しかし、一歩間違えれば大きな事故になることもあります。
子どもも自分も守るために、普段から注意深く子どもを観察して、大きな事故を防ぐようにしましょう。