待機児童問題、潜在保育士、保育料無償化など、ここ数年保育業界の注目が高まりました。保育士の待遇・処遇はさほど変わりがないと言われていますが、保育士として就職し、目指せる最高年収とはどれくらいなのでしょうか。
目次
平均的な保育士の月収やボーナスとは?
2017年に内閣府が発表した、「保育士及び幼稚園教諭の平均賃金等の実態について」によると、勤続年数が7年、年齢36歳の保育士の平均月給は年額228万円、平均年収は約340万円というデータがあります。
全国の全職種平均年収が、263万円というのに比べると、保育士の給料は専門職でありながら少ないといえるのではないでしょうか。
出典/平成29年度保育士及び幼稚園教諭の平均賃金等の実態について :内閣府
保育士の給料はどこから払われているのか?
保育園は私立保育園の場合は、個人が経営しています。認可保育園の場合は国の基準をクリアしているので、国や自治体から補助金をもらい、運営費の一部に充てています。
このほか、毎月保護者が支払う保育料も財源となりますが、これまでとは保育のサービスや育児に関する国の態勢が変わり、2019年に子育て支援サービスの一つとして、保育料の無償化がスタートしました。
3歳未満児の保護者からのも保育料が収められていますが、例外もあり、住民税非課税世帯は無償となります。また、3歳以上児の保育料も無償で、消費税が10%に増税になった税収分からの補助となりました。
保育園は二つの財源を利用し、そこから日々の保育に関する運営費を捻出しています。運営費を差し引いた残りが、保育士の人件費となります。
保育施設や役職によって変わる収入
保育園の運営については、自治体から補助金がでる関係から、暮らす地域・就職する地域によって保育士の収入は変わります。就職先の保育施設によっても収入が変わりますが、どのような差があるのでしょうか。
また、主任や副園長などの役職がつくとどのような変化があるのでしょうか。
保育施設
認可保育施設とは、私立保育園・公立保育園・幼保連携型認定こども園・小規模保育・事業所内保育園などがあります。国や自治体から受ける補助金と、保護者からの保育料で運営し、その残りが職員報酬となります。
国の基準を満たしてない保育園や、国に認可申請をしていない保育園は認可外保育園で、国や自治体からの補助金は受けていません。そのため運営費は保護者からの保育料で賄います。
認可外保育園の中にも特例があり、東京都などの都心部では国の基準をはたしていなくても保護者のニーズを満たしている保育施設で自治体独自の基準を満たしたとして認証を与え、補助金制度のある自治体もあります。
施設別に見た場合の保育士の給料が高い順として、
1.家庭的保育事業(保育ママと言われ、自宅や自分の用意した場所で保育を提供する事業)
2.公立保育園(保育士は地方公務員扱い)
3.私立保育園
4.小規模保育事業
5.公立認定こども園
6.私立認定こども園
7.小規模保育園事業(B型)
8.事業所内保育事業
となっています。
役職によって手当がつく
主任や副園長など、役職がつけばその分の手当が上乗せされます。
2017年には新しい制度「保育士処遇改善等加算Ⅱ」がスタートしました。
全保育士へ役職にかかわらず2%の給与額の引き上げと、さらには、主任保育士に昇格する前に離職する保育士が多いことを鑑み、役職名が新設されました。
それぞれの役職名とその要件は下記の通りです。
・職務分野別リーダー:保育士歴3年以上、担当する分野の職務を研修済み、研修分野のリーダー
↓
処遇改善手当:月額5,000円
・副主任保育士:保育士経験年数7年以上、職務分野別リーダー経験済み、マネジメント+3つ以上の分野で研修済み、副主任である
↓
処遇改善手当:月額40,000円
・専門リーダー:保育士経験年数7年以上、職務分野別リーダー経験済み、4つ以上の分野で研修済み、専門リーダーである
↓
処遇改善手当:月額40,000円
ただし、これは国から保育園経営者へ渡されるものであり直接保育士に支給されるものではありません。そのため給与にいかほど反映されるかは園によって異なります。
出典/平成30年度 子ども・子育て支援新制度 市町村向けセミナー資料:内閣府
主任や副園長の他、最高役職の園長の役職を目指すには、公立保育園の場合は様々な役職と、保育士としての経験を10年以上積み、公務員試験と昇格試験を受け、自治体から承認を受ける必要があります。
私立保育園の場合は、保育園の方針によって違ってくるので一概には言えません。
園長の収入としては、私立保育園の場合の平均額は525万円、公立保育園の場合は平均額が700万円程度と言われています。私立保育園でも財力のある保育園などでは、1,000万円を超える収入がある園長もいるようです。
自治体の補助金
国の認可を受けた認可保育園であれば、自治体から補助金をもらうことができます。
保育園補助金の負担割合
国1/2
都道府県1/4
市町村1/4
ただし、公立施設(幼稚園、保育所及び認定こども園)は市町村等10/10
□出典/内閣府・文部科学省・厚生労働省
そのため就職する地域によって、給料には差が生じます。日本で一番保育士の給与が高額なのが、東京をはじめとする関東地方、次いで関西、中国地方、最下位は東北・北海道地方で、平均年数は261万円です。
全国的な平均年収が340万円ほどなので、保育士の年収が低いのは明らかです。諸所の経費を差し引くと手取りは18万円ほどになるでしょう。勤続年数を重ね、役職がついていけば若干の昇給はありますが、新人と50代保育士の差額は平均6万円ほどと言われています。
出典/保育士の平均賃金
まとめ
保育士としての最高収入を目指すためには、関東地方で園長になること…。という結論ですが、園長はその人間性が問われ、責任も重大です。幅広い視点とコミュニケーション能力も必要になりますね。
ただ、自分の目指す理想の保育が叶えられ、収入が増えるというメリットもあります。魅力を感じる人は目指してみてはいかがでしょうか。