保育士は、子ども好きな人にとって天職ともいえる仕事。でも、給料が安いという話もあるので気になりますよね。
実は、東京都保育士実態調査によると、給与の低さは保育士の退職理由No.1。なんと70%以上の保育士が「お給料が低いから生活できない…」と退職しているのです。
保育士の給与問題を解決するためには、まずはこのような事態を引き起こした原因を知ることが大切です。ここでは、保育士の給与問題が起こった原因と、保育士ができる解決法や政府の取り組みなどを紹介します。
ぜひ参考にしてください。
目次
保育士の給料が低い理由
保育士の給料が低い理由は、次の3つです。
- 保育園に入ってくるお金が少ない
- 軽視されていた時代がある
- 給料のコストカット
それぞれ解説していきます。
保育園に入ってくるお金が少ない
保育士の給料が少ないのは、そもそも保育園に入ってくるお金が少ないことが原因です。
詳しく説明するために、まずは簡単に保育園のお金の動きについて説明しますね。
国に認められている「認可保育園」の場合、「保育園を運営するにはこれくらいかかるよ」という金額(公定価格)を国が定めています。
もし、認定保育園の運営に1月100万円必要なのに、利益が80万円しかないと営業ができなくなってしまいますよね。そのような事態を避けるために国は、運営に必要な資金を補助金として援助しています。
※無認可保育園の場合、補助金が出ないので保育料のみでやりくりする必要があります。
しかし、公定価格は、保育園がスムーズに運営できる最低のラインを基準にしているため、認定保育園の運営は常にギリギリの状態です。
例えば、都心部だと家賃が高くなるため、公定価格の金額をもらっても運営が厳しくなることも。
もちろん保育士の給与も、この限られた運営費から支払われるため、必然的に給与が低くなってしまいます。
軽視されていた時代がある
保育士の給料が低いのには、「保育士」という仕事が軽視されてきた時代があるからです。
もともと、日本は「子どもの面倒をみるのは母親の役目」という考えが根強い国でした。今より「核家族化」が進んでいなかったこともあり、働きに出る母親は祖父母や知り合いに子どもを預けるのが当たり前。お金を払って預けることに、抵抗を感じる人が多かったのです。
1887年ごろ、夫婦で共働きの家族が増えてきたため、現在の保育園の原型となる施設が誕生しましたが、主な役割は子どもを預かること。保育について深い知識を持っている人ははごくわずかで、「保育園=子どもを育てる」という概念はありませんでした。そのため、保育士の仕事についても「子どもと遊んでいるだけ」と軽視されることに。
そしてやっと保育園が子どもを育てる施設として認められたのは、1948年になってからのことでした。ようやく最初の保育士資格が生まれ、保育について深い知識を持つ人が雇われるようになったのです。
このように「保育士は誰でもできる仕事」という扱いが長かったため、「低賃金でもしょうがない」と不満を覚えながらもあきらめてしまう保育士が多く、問題が表に出てきませんでした。
給料のコストカット
保育士の給与が低いのは、給料がコストカットされているのも原因の一つです。
保育園は他の業種と比べて人件費が高いため、利益を出すのが難しいと言われています。そのため、少しでも利益をだし、営業を続けるために人件費である保育士の給料を抑えていることが少なくありません。
認可保育園は国や自治体から補助金を受け取っていますが、どのように使うかは保育園の経営者に任されています。そのため、「保育士の給料は低いものだ」と思い込んでいる経営者は、自分の給料を高くして保育士の給料をギリギリまで抑えていることがあるのです。
つまり、運営費でやりくりできているのであれば、園長や経営者の年収が800万あっても法律としては問題ありません。もちろん、定期的に国からのチェックは入りますが、極端に一人だけ金額が高すぎるということがなければ、おとがめなし。
認可や無認可に関わらず、人件費を抑える風潮が生まれ、保育士の給与が低くなりがちなのです。
保育士の給料の現状
これまで保育士の給与が低い理由を説明してきましたが、実際どれくらい低いのでしょうか?
実は、保育士には公務員である「公立保育士」とその他の「私立保育士」によって給料に違いがあります。ここからは、「公立保育士」と「私立保育士」に分けて給料を見ていきましょう。
公立保育士
公立保育士は、県立や市立、町立など自治体が運営する保育園で働いている保育士です(別名「公務員保育士」ともいわれます)。
公立保育士は、自治体によって給料が変わります。
この金額から保険料などを引いて手元に入るのは、およそ80%。手取り額でも平均24万円~26万円ほど給料として入ってきます。
私立保育士
私立保育士は、公務員ではなく民間で働いている保育士のこと。
一方、厚生労働省によると、私立保育園で働く保育士の平均給与は約21万3000円です。この金額から保険料などを引くと、平均16~18万円ほどしか給料として入ってきません。
なぜ、公立保育士と私立保育士で差が出るの?
公立保育士と私立保育士の給与にここまで差が出るのは、公立保育士は長く勤めるほど給料が必ず上がるシステムをとっているためです。しかし、公立保育士になるには公務員試験を受けて、合格しなければいけません。狭き門のため公立保育士の数は少なく、私立保育士が多くを占めているのです。
ちなみに、全産業の平均給与は約30万4000円とされています。日本の仕事のなかでも、私立保育園で働く保育士の給与はとても低いのです。
このように、同じ保育士でも私立保育士の給料は平均的に低いということが分かります。しかし、このままでいいはずはありません。
ここからは、保育士が給料をあげるためにできることを紹介していきます。
保育士の給料を上げる解決策
保育士の給料を上げる方法は、次の2つです。
それぞれ詳しく説明していきます。
保育士がお金のことを勉強する
給料を上げるためには、保育士自身がお金のことをしっかり勉強するようにしましょう。
認可保育園の運営費は国が定めているようなもの。国が金額を変えようとしなければ、増えることは期待できません。徐々に改善されるとは言われていますが、待つだけの日々になってしまいます。
それよりも現実的なのは、保育士自身がお金に詳しくなることです。保育園の運営費や給料について、本やテキストで勉強しましょう。アプリで勉強できるものもあります。
先ほど説明したように、営利目的の経営者が増えてきているのも事実。しかしお金に詳しくなっておけば、あまりにも「給料が低いな…」と感じたとき、経営者にも堂々と質問できます。「お金に詳しい人はだませない…」と給料の改善も見込めるのです。
どれくらい安いのか、現場で働く保育士が発信していかないと、今の実態を変えることはできません。まずは今働いている保育園はどれくらいお金が入ってくるのか、自分の給料は少なすぎないか、お金のことをしっかり勉強しましょう。
別の保育園へ転職する
今より給料を上げるためには、別の保育園へ転職しましょう。
全国的に保育士の給料は低いものの、全ての保育園で給料が低いわけではありません。今よりも給料が高い保育園を探しましょう。
保育園を探すときは、保育士専門の転職サイトを利用するのがオススメです。給料以外にも譲れないポイントも入れて保育園を探すこともできます。
もし自分の経歴に自信がないという方でも大丈夫。転職サイトの中には、保育士の転職をサポートしてくれるコンサルタントもいます。何から準備したらいいのか、しっかりアドバイスしてくれるので、心強いですよ。
オススメの転職サイトはこちらで紹介しています。無料で登録できるサイトもあるので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
まとめ
保育士の給料の低さの実態や原因、そして解決策について紹介してきました。
保育士の給料の低さは、とくに私立保育士の間で深刻な問題です。国が補助金を増やせば、一人当たりの金額は上がりますが、いつになるか分かりません。まずは、保育士が自分自身の給料の仕組みについて、しっかり勉強しておくことが大切です。
また別の保育園に転職するのも、方法のひとつ。保育士は人手不足の状態なので、基本的に転職しやすい状況です。自分の希望に合う保育園を探してみましょう。
保育士は子どもの人格を形成する時期に関わる、とても大切な仕事。国任せになるのではなく、「自分たちで変えるんだ!」という気持ちを忘れなければ、今より働きやすい環境を作れます。保育士も子どもたちも笑顔で過ごせるように、勉強していきましょう。