[quads id=1]
インクルーシブ保育とは、子どもの障がいや国籍のような「違い」を全て受け入れる保育のこと。幼い頃から「個性」を認め合う環境に入ることで、将来的に偏見や差別を生まない教育を目指しています。文部科学省も推奨していることから注目を集めており、実施している保育園も増えてきているのです。
でも「具体的にどんなことをするの?」「メリット以外にも課題があるんじゃない?」と思うかもしれませんね。
そこでここでは、インクルーシブ保育について詳しく解説。インクルーシブ保育の魅力だけでなく、実施する方法や課題についても紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
目次
インクルーシブ保育とは?どんな保育?
インクルーシブ保育とは、子どもの年齢や国籍、障がいなどの違いを全て受け入れる保育のこと。
文部科学省でも推奨していて、「全ての子ども」ができるだけ同じ場で共に学ぶことを目指しています。
今まではとくに「障がい」の有無が重要視されていましたが、インクルーシブ保育では「障がい以外も個性として受け入れる」という点がポイントです。
中には、年齢の違いをなくして縦割りのクラスを設けている保育園もあります。
「子どもたちには、それぞれ違いがある」ことを意識しつつ、全ての子どもが共に成長できるように、一人ひとりの発達に寄りそうのがインクルーシブ保育なのです。
インクルーシブ保育の魅力やメリットはなに?
それでは、インクルーシブ保育にはどのような魅力があるのか見てみましょう。
子どものメリット
まず子どもたちにとっては、次のようなメリットがあります。
・個性を踏まえた他の人との関わり方を学べる
・状況に合わせた対応力が身につく
・違いからたくさんの刺激を受け、成長につなげられる
・離されることで生まれる差別や偏見を防ぐ
子どもは周りからたくさんのことを学ぶもの。そしてインクルーシブ保育では、「他人と自分は違うのが当たり前」という環境になるため、今まで体験できなかったことを学べるのです。
例えば、年齢が違う子どもや障がいを持った子どもと接することで、違いを踏まえた他人との関わり方を学ぶことができるでしょう。同時にさまざまな子どもとの関わり方を学べるため、将来的に「状況に合わせた対応」ができるようになります。
他にも、自分には難しいことを周りの子どもたちがやっているのを見て、「私もやってみよう!」とチャレンジする機会を作ることも。
また、「違い」から離されると個性を知らないまま成長するため、無意識に差別や偏見を生みやすくなります。個性を認めて共に成長するという環境は、このような差別や偏見を防ぐというメリットもあるのです。
[quads id=1]
保育士のメリット
次に、保育士にとってのメリットを見てみましょう。
・療育や医療的なケアなど、知識の幅が広がる
・保護者に感謝される
・大きな社会貢献になる
インクルーシブ保育では、さまざまな障がいを持つ子どもたちとふれ合います。そんな中、保育士は一人ひとりの発達に合わせた保育を行わなくてはいけません。そのため、障がいを持つ子どもへの支援方法や療育、医療ケアなど高い保育スキルが身につきます。
また、障がいを持つ子どもの保護者にとって、「違い」を認めてもらえるという環境は、望んでも実現しにくかったもの。子どもの可能性を信じてお世話してもらえるのは、保護者にもうれしいことなのです。
自分の保育スキルが上がるだけでなく、たくさんの人から感謝されることで、社会貢献をしていると実感しやすいのが大きなメリットでしょう。
インクルーシブ保育の課題やデメリットとは?
それでは、インクルーシブ保育の課題やデメリットを見てみましょう。
子どものデメリット
子どもにとっては、次のようなデメリットがあります。
・活動によって、「物足りない」と思う子どもが出てくる
・正しい支援がないと、「私にはできない」という劣等感が生まれる
インクルーシブ保育には、個性への理解が必要不可欠。個性について理解できなければ、適切な支援もできないからです。それでも、「違い」を認めるのは簡単なことではありません。
個性への理解と支援が不十分になれば、子どもによっては「物足りない」と感じたり、逆に「自分にできないことばかり…」と劣等感を覚えてしまいます。
そうなると、せっかくの環境を活かすことができずに、のびのびと成長できなくなるでしょう。
保育士のデメリット
続いて、保育士のデメリットを見ていきます。
・保育士資格だけでは対応しきれない
・危険に敏感にならなくてはいけない
・より綿密な指導計画を練らなくてはいけない
・保護者対応が難しい
・前例が少なく、ノウハウやスキルが未熟
インクルーシブ保育には、専門のスキルと知識が必要です。保育士資格だけでは対応しきれないことも多く、仕事をしながら新しい資格勉強をすることもあります。
子どもたちのために学び続ける姿勢がなければ、インクルーシブ保育は難しいのです。また、違いがあるからこそ、同じ見守りは通用しません。発達段階が違うため、一人ひとりに合わせて危険性を把握していないと、子どもにケガをさせてしまうリスクがあります。
危険がないように遊びや環境を整えつつ、一人ひとりの発達に合わせた指導計画を作らなくてはいけません。
またインクルーシブ保育の導入例が少ないため、「こういうときはどうすればいいの?」と困ることもあるでしょう。職員同士で連携を取り、協力しながら毎日の課題を解決していく姿勢も必要なのです。
それでは、どうすればインクルーシブ保育を実施できるのでしょうか?
インクルーシブ保育を実践する方法
インクルーシブ保育を実施するためには、保育士が「インクルーシブ保育」について知識を身につけなければいけません。
例えば、障がいを持つ子どもにできる医療的なケアや、多国籍の子どもや保護者と話せるように英語などの外国語の習得もいいでしょう。
まずは、自分の興味や関心があるものから、積極的に勉強してみましょう。保育士+αの知識があれば、強い味方になってくれますよ。
また、次のような書籍を読んで、インクルーシブ保育に必要なスキルを学ぶのも良いでしょう。
障害児保育の理論と実践―インクルーシブ保育の実現に向けて
(著者:堀 智晴、橋本 好市 ミネルヴァ書房)
保育士が、インクルーシブ保育についてより深く理解できるように編集された一冊。保育で配慮するべきポイントや、保護者への支援方法など実践的なことを勉強できます。
イラストでわかるはじめてのインクルーシブ保育:保育場面で考える50のアイデア
(著者:高倉 誠一、広瀬 由紀、相磯 友子、柴崎 正行 合同出版)
インクルーシブ保育をイラストで図解している一冊。初めて学ぶ人にも分かりやすくてオススメです。保育現場で使えるアイデアを紹介しているので、通常の保育園でも活用できます。
インクルーシブ保育に取り組む保育園の紹介
最後に、インクルーシブ保育に取り組んでいる保育園を2つ紹介します。
聖愛園
聖愛園は、大阪市東淀川区にある保育園。
約40年前からインクルーシブ保育に取り組んでいます。障がいの有無だけではなく、年齢も違う子どもたちがグループになり、1つの課題に取り組みながら、相手を尊重する力を身につけることが目標です。園長の野島先生は2016年にNHKで取り上げられました。
カンガルー統合保育園
カンガルー統合保育園は、横浜市鶴見区にある保育園。障がいの有無に関係なく、子どもたちがお互いの存在を認め合い、共に成長することを目標にしています。
こんな職場には気をつけて!
このように、数は少なくても「インクルーシブ保育」を実践している保育園はあります。
ただし、中には入園者を増やすために受け入れを行っている園もあるので注意しましょう。
保育園を運営するには、ある程度子どもの数を確保しなければいけません。そこでもっと子どもを入園させるために、「インクルーシブ保育」をうたって子どもを受け入れているところもあるのです。
このような営業主義の保育園では、障がいについて正しい知識やスキルがない保育士ばかりの園やインクルーシブ保育を実践できる職員配置をしていない園もあります。すると正しい支援ができず、最終的に子どもが辛い思いをすることに…。
そんな保育園を選ばないように、本当に「インクルーシブ保育」を実践しているのか、ホームページやパンフレットで理念を調べてみましょう。実際に職場見学にさせてもらうのも手の一つです。
正しい支援をするつもりがない保育園で、インクルーシブ保育を実践するのは危険だと覚えておきましょう。
まとめ
インクルーシブ保育とはどんなものか、内容や魅力、課題について紹介してきました。
インクルーシブ保育とは、子どもは一人ひとり違うことを前提にした保育のことです。幼い内から個性を認め合うことで、将来的に「差別」を生まない教育を目指しています。
ただし、実際に取り組んでいる保育園は多くありません。
子どもたちが違いを認め合いながら活躍できる世界にするためにも、まずは保育士が医療ケアや療育などの知識をしっかり身につけることが大切なのです。