持ち帰り仕事が多くて、ストレスがたまっていませんか?
保育士で大変なことのひとつが、「仕事の多さ」。書類作成や壁の飾りつけ、行事の準備など、勤務時間内に終わらずに家に持ち帰ることが多いのです。持ち帰り仕事は、自主的にしているとみなされるため、残業代は出ません。それでも「本当は持ち帰りたくないけど、仕方ないからやっている」という保育士がほとんどです。
ここでは、アンケートの結果から分かった保育士の持ち帰り仕事の実態を紹介。また、持ち帰り仕事を減らすためのポイントについて紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
目次
持ち帰り仕事の実態
まずは、保育士の持ち帰り仕事の実態について説明します。
人材紹介会社「ウェルクス」が保育士の残業時間についてアンケートを行ったところ、次のことが分かりました。
- ほぼ毎日、持ち帰り仕事をしている保育士は32.8%でもっとも多い
- 週に1回以上、持ち帰り仕事をしている保育士は80%以上
- 持ち帰り仕事にかかる時間は「1時間~2時間」が34.8%で、もっとも多い
「もっとも長かった残業時間は?」という質問では、「8時間~10時間」という声もありました。この結果をみると、持ち帰り仕事をしていない保育士はわずか20%未満。ほとんどの保育士が持ち帰り仕事を経験しており、とても厳しい勤務状態ということが分かりますね。
それでは、持ち帰り仕事をしている保育士は、どのような仕事を持ち帰っているのでしょうか?
保育士が持ち帰っている仕事
保育士が持ち帰っている仕事は、主に次の8つです。
- 年間と月ごとの指導計画
- 子ども一人ひとりの保育記録
- おたより
- イベントに必要な衣装や小道具づくり
- 教室内の飾りつけ
- 誕生日カードやイベントのお誘いカードづくり
- 手づくりのおもちゃ制作
- 卒園アルバム
とくに指導計画や衣装づくりは、より良いものに仕上げるため、時間がかかるもの。保育記録も人数が多いと、書き上げるのが大変です。毎日体力も精神も消耗して帰ってくるのに、とてもやっていられない仕事量ですよね。
長時間労働は、体にも心にも強いストレスを与えます。保育士の中には、持ち帰り仕事をしすぎて仕事に支障を出してしまう人もいるのです。
持ち帰り仕事をしすぎると体調不良になることも。。
持ち帰り仕事をしすぎた保育士には、次のような体の異変が起こることがあります。
- 肩こりや腰痛
- 頭痛や生理痛、めまい
- 眠気からくる判断力の低下
保育士は日中は、多くの子どもたちを相手にしています。子どもたちの体力は底なし。全力を出さないと、全員の子どもと向き合えません。
しかし、全力で仕事をした後に待っているのは事務や雑務。同じ姿勢で長時間仕事をするため、肩こりや腰痛を引き起こします。また、夜遅くまで仕事をするとホルモンバランスも崩れてしまい、頭痛や生理痛がひどくなることもあります。さらに睡眠時間が極端に短くなるため、常に眠く注意力や判断力が鈍ってしまい仕事で失敗してしまうことも。。
保育士にとって、体調のコンディションが悪いのは非常に危険です。子どもたちの小さな変化を見逃してしまったり、危険が察知できなくなります。そして判断力も下がったままだと、仕事がスムーズに進められず、また残業することになるという悪循環に……。
保育士の健康や子どもにとってリスクがあることが分かっているのに、なぜ持ち帰り仕事は改善されていないのでしょうか?
保育士に持ち帰り仕事が多い理由
保育士の持ち帰り仕事がなくならない原因は、次の4つです。
- 日中は仕事を進められない
- 深刻な人手不足
- 先輩も残っているので、早く帰れないという心理
- 残業することが、子どもへの愛だと思ってしまう
それぞれ説明していきます。
日中は仕事を進められない
保育士は日中に仕事を進めることができないため、持ち帰り仕事が増えてしまいます。
とくに一人担任の場合、子どもの様子を見ながら衣装づくりや書類を作ることに。子ども全員がじっとしている時間は、ほとんどありません。また急にケンカを始めたりすると、仕事が途中でも仲介に入ります。
そのため集中して仕事に取り組めるのは、子どもたちが全員帰った17時以降しかありません。開始できる時間が必然と遅くなるため、定時までに仕事が終わらず、家に持ち帰って仕事を続けることになってしまいます。
深刻な人手不足
保育士不足は、持ち帰り仕事を増やす原因の一つです。
人手が足りないと、一人当たりの仕事量が増えてしまいます。他に頼れる人がおらず、自分で仕事をこなすしかないのです。
先輩も残っているので、早く帰れないという心理
保育士が持ち帰り仕事をしてしまうのには、心理的な問題も関わってきます。
人は周りに合わせて、自分の行動を選択してしまう生き物。そのため、自分よりも立場が上である先輩たちが残業や持ち帰り仕事をしていると、「自分だけがやらないわけにはいかない」と考えてしまうのです。
「どうしても定時で帰りたいけど、冷たい目で見られるんじゃないか」と思ってしまったり、「先輩の仕事を手伝わないと」と自分の仕事を後回しにしてしまう人も。周りが率先して残業をしていると、「自分だけが苦しいというなんて非常識だ」と考えがちになってしまうのです。
残業することが、子どもへの愛だと思ってしまう
人は辛いことやしんどいことをしていると、その行動を正当化したくなるもの。同様に、保育士には「私がこんなに残業しているのは、子どものためだ」と考えて、ますます持ち帰り仕事を増やしてしまう人がいます。
とくに身近な同僚や先輩が「私、子どものためならどんなに残業してもいい!」と言っていると、「私も残業しないと、子どもにとって良い先生じゃないな……」という心理が働いてしまうのです。
子どもにとって良い先生とは、自分の健康を犠牲にすることではありません。まずは心と体の健康をキープするために、持ち帰り仕事はなくしていきましょう。
ここからは、持ち帰り仕事をなくす方法を紹介していきます。
持ち帰り仕事をなくす方法
持ち帰り仕事をなくす解決策は、次の6つです。
- 残業時間を制限しよう
- スキマ時間を活用しよう
- 効率よく仕事をしよう
- 得意分野を活かして、他の保育士と作業分担しよう
- 労働基準監督署に相談しよう
- 持ち帰り仕事が少ない職場へ転職しよう
それぞれ詳しく説明します。
残業時間を制限しよう
持ち帰り仕事をなくすには、まず残業時間を制限しましょう。
「仕事を持ち帰る」という状況に慣れてしまうと、心のどこかで「どうせ家でやるからいいか」と考えてしまいがち。そのままでは、残業時間をなくすことはできません。しかし、すぐに残業時間をゼロにするのは難しいですよね。
そこで、まずは自分で残業する日としない日を決めましょう。「水曜日は絶対に残業なし」「残業は週に3回、19時まで」と具体的に自分で決めることが大切です。目標が決まれば、「19時に帰るには、18時までに半分終わらせよう」と仕事を終わらせる目安がつきます。
「何時間残業しても変わらないしな…」という思考をはやく直すために、「残業しない」という意志を持つようにしましょう。
スキマ時間を活用しよう
持ち帰り仕事を減らすには、スキマ時間を活用しましょう。
空いている時間に少しずつ仕事を入れていけば、確実に仕事量を減らすことができます。
例えば、お昼寝の時間には、集中力が必要な衣装づくりや数が多い保育記録を記入していきましょう。また、1日の時間の使い方を改めて見直してみるのも方法の一つ。意外といろいろなところに、スキマ時間を見つけることができます。
スキマ時間を見つけたら、その時間でどんな仕事ができるかも考えてみましょう。
効率よく仕事をしよう
持ち帰り仕事を減らすには、一つひとつの仕事を効率よく終わらせていきましょう。
仕事を効率よく終わらせることができれば、全体的に仕事の時間を短くできます。
例えば、毎月つくる「おたより」は、手描きからパソコンで打ちましょう。ある程度フォーマットを作っておくのもポイントです。他にも、飾り付けの準備で「切る」「貼る」の作業が必要なら、まずは必要な数の分まとめて切り、でき上がったらまとめて貼ると効率よく進めることができます。
仕事は案外、完璧に仕上げなくても回っていくもの。気を張りすぎず、ある程度力を抜いて作業を進めましょう。
得意分野を活かして、他の保育士と作業分担しよう
持ち帰り仕事をなくすためには、他の保育士と作業分担しましょう。それぞれの得意分野で作業を分担すれば、大幅に作業時間を短くできます。
例えば、自分はお裁縫が得意で、同僚は単調な作業が得意だとしましょう。その場合は同僚にひたすら材料を切ってもらい、自分はひたすら衣装を仕上げていきます。
保育園では、職場のチームワークもとても大切。お互いの不得意なところをカバーして、みんなで持ち帰り仕事をなくしていきましょう。
労働基準監督署に相談しよう
労働基準監督署に相談するのも、持ち帰り仕事をなくす方法の一つです。
労働基準監督署とは、国が設置している組織のこと。労働基準法に関することなら、何でも相談できます。
※パワハラやセクハラについては、相談の範囲外です。
保育園が残業代を払ってくれなかったり、持ち帰り仕事があるときは、記録して持って行けば、会社に「残業代を払いなさい」と交渉してくれます。ただし、土曜日と日曜日はお休みなので、平日にお休みをとっていかなくてはいけません。
どうしても、時間がとれないというときは「ユニオン」という労働組合団体に入るのもオススメします。労働基準監督署より社会的な権限は弱いものの、時間に関係なく相談にのってくれます。
- ユニオン ホームページ:http://www.jca.apc.org/j-union/
周りに味方がいないと感じたときは、このように外の団体に頼ってみましょう。
持ち帰り仕事がない職場へ転職しよう
もし、「周りに味方もいない」「保育園ともめるのはイヤだ」という人は、転職するのがオススメです。
保育園は持ち帰り仕事が多いと言われているものの、全ての保育園で持ち帰り仕事をしているわけではありません。探してみれば、残業が少ない保育園や残業代を全額支給している保育園も必ずあります。
保育園を探すときは、保育士専用の転職サイトを使うのがオススメです。自分の希望で保育園をしぼれたり、コンサルタントが転職のサポートをしてくれます。
こちらで、オススメの転職サイトを紹介しています。無料で登録できるので、気軽に試してみてくださいね。
まとめ
保育士の持ち帰り仕事の実態や、持ち帰り仕事をなくす方法について紹介しました。
保育士はおよそ80%の人が、持ち帰り仕事をしています。努力家の人や子どもが好きな人はとくに、自分を追い詰めてまで仕事をしてしまうことも。
しかし残業は、心にも体にもストレスをため込みます。もっと自分を大切に、仕事よりも健康を優先して良いのです。今の環境が辛いのなら、別の保育園に転職するのも自分を守る手段の一つ。
保育士が元気でいることが、本当の子どもの笑顔につながります。ぜひこの記事を参考にして、素敵な保育士ライフを送ってくださいね。