保育士の仕事は、子どもたちの成長をお手伝いすること。しかし、子どもにだけ接していればいいわけではなく、預かっている子どもの保護者とも関わりを持たなくては仕事になりません。
しかし、人とは難しいもの。何気ない一言やちょっとした行動で、保護者とのトラブルを引き起こすことがあるのです。実際、保護者とのトラブルで担任を外されるという保育士もいるほど…せっかく「保育士」という夢を叶えたのに、1回のトラブルが原因で夢の舞台から降りたくありませんよね。
そこで、ここでは保護者とのトラブルにうまく対応するコツについて詳しくご紹介。トラブルの原因になりやすい言葉や、保護者の心理についても紹介します。
保護者と円満な関係を保つために、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
保護者とのトラブルに対応するには、トラブルの原因を考える
保護者とのトラブルにうまく対応するには、いくつかのポイントがあります。
コツが分かりやすくなるように、まずは保護者とのトラブルの原因について説明しますね。保育士と保護者のトラブルの原因になるのは、次の2つです。
- 子どもに対する思いの違い
- 保育士に対する認識の違い
前提として、保育士は「保育園にいる子どもたち全員が大切」という考えを持っています。一方、保護者は「自分の子どもがもっとも大切」と考えているもの。そのため、子どもたちがケンカしたとき、相手の保護者に怒ったり、保育士にクレームを入れたりします。
また、大学を出たばかりで経験が少ない保育士は、保育技術もまだまだ未熟。ただし、保育士本人がそう思っていても、子どもを預ける保護者は「保育士=保育のプロ」と考えています。そのため、何か問題が起こると「お金を出してプロに預けてるのに、どうしてそんなことが起こるの?!」と思ってしまうもの。
このような認識の違いから、保育士と保護者でトラブルが起きてしまうのです。そのためトラブルが起きたとき、まず「保育士と保護者は、2つの認識が違う」ことが分かっていれば、トラブルを防ぎ、うまく対応することができます。
次からは、保護者とのトラブルにうまく対応するためのコツを、具体的に説明していきます。
保護者とのトラブルにうまく対応する5つのポイント
保護者とのトラブルにうまく対応するためのコツは、しっかりコミュニケーションをとること。「私は、あなたのことを分かろうとしています」という姿勢でいれば、保護者も信頼しやすくなるからです。
とくに、次の5つの点で注意しましょう。
- 落ち着いてゆっくり話す
- どちらか一方の味方にならない
- 言葉づかいに注意する
- 身だしなみを整える
- 連絡帳は細かくポジティブに書く
それぞれ具体的に説明します。
落ち着いてゆっくり話す
保護者と話し合うとき、保育士は落ち着いてゆっくり話しましょう。
早口の言葉で返事を返されると、人は「攻撃をされている!」と感じてしまいます。
まずはしっかり保護者の話を聞きましょう。返事をするときは、保護者が話し終わったタイミングでするのがベストです。冷静に、落ち着いた声で事実を述べるようにしましょう。
ただし、子どもがケガしたときなど、危険な場面についての抗議であれば、保育士として管理不足だったことを心から謝ります。「でも……」「そんなこと言ったって…」と、保護者の意見は否定しないようにしましょう。
はやく解決するために、早口で話す必要はありません。お話をするときは、落ち着いたトーンで話すことを心がけましょう。
どちらか一方の味方にならない
子ども同士のケンカなどが原因で保護者からクレームがきたときは、どちらか一方の味方にならないように気をつけましょう。一方的に意見をうのみにしてしまうと、他の保護者や子どもからの信頼を落としてしまいます。
例えば、「同じクラスの○○くんが、うちの子を殴ったそうなんです。ちゃんと謝らせたんですか?」とある保護者に言われたとします。そしたら「教えていただきありがとうございます。○○くんにも確認して、すぐご連絡いたします。」と、まずしっかり「事実が分からないので、確認する」という代案を伝えましょう。
もし「うちの子がウソをついてるって言うの?!」と返されたときは、真摯な対応をしつつ、事実を確認できていなかったことのみ、謝罪します。例えば、「とんでもございません。私が事実確認できていなかったので、まずは子どもたち自身の話を聞かなくてはいけないのです。」「私の管理不足でご心配をおかけして、申し訳ございませんでした。」と伝えると丁寧さが伝わります。
勢いよく話しかけられたとき、相手のペースに飲み込まれないように、「保育士は子どもと子どもをつなぐ中立的な立場」と常に意識しておきましょう。
言葉づかいに注意する
保護者とコミュニケーションをとるときは、言葉づかいに気をつけましょう。
何気なく言った言葉でも、感じ方は人によって違うもの。一歩間違えたら、一生保護者の心に突き刺さったままになることもあります。
例えば、次の言葉は言わないようにしましょう。
- 子どもを侮辱している(○○ちゃん、要領が悪くて…)
- 保護者の立場を理解していない(お仕事だけじゃなく、ちゃんと○○くんも見てあげて)
- 言い訳をする(だって、そんなこと知らない)
- 子どもの性格や発達を決めつける(この時期でまだ歩けないのは、問題ですね)
人は一人ひとり価値観が異なるため、すべてを理解するのは難しいもの。だからこそ、相手の立場や気持ちを考えて発言することが、保護者と円満な関係を結ぶことができるのです。
身だしなみを整える
保護者から信頼をされやすくするために、身だしなみも整えておきましょう。
見た目も、コミュニケーションの一つ。いつも身だしなみを整えていれば、「きちんとしている先生だな」と思われやすくなります。
一方、シャツのボタンが空きっぱなし、香水のにおいがきつかったりすると「子どもを預けて大丈夫かな?」と不安に思われやすいもの。
清潔感のある服装や化粧をするように心がけましょう。
連絡帳は細かく、ポジティブに書く
連絡帳を書くときは、細かくポジティブな言葉で書きましょう。
連絡帳もコミュニケーションの一つ。保護者が見られない子どもの様子を細かく、ポジティブな言葉で伝えることで、「この先生は、うちの子をしっかり見てくれている」と信頼されやすくなります。
例えば、「跳び箱を飛ぼうとしたけれど、飛べなかった」ことについて書くとしましょう。
「今日は跳び箱に挑戦。一生けんめい走り、みんなの応援を受けながら、飛び越えようとがんばりました。しっかり踏み込めているので、飛べる日はもうすぐ来そうです。」と小さなことでも細かく、ポジティブな言葉にすれば、保育士から子どもへの愛情も伝わります。
一方、「○○くんは今日も飛べませんでした。」とだけ書かれると、保護者としては「それだけ?声かけとかしなかったの?」「うちの子、自信なくしたかしら…」と悲しく感じてしまうもの。
ただ長く書いても、しまりがないので良くありません。正確かつ、暖かくて愛情のある文章を書くように心がけましょう。
短い時間でも、しっかりとコミュニケーションをとることが大切
以上が、保護者とのトラブルをうまく対応する方法です。保育園に子どもを預ける保護者は、忙しい人が多いもの。コミュニケーションをとる時間は、送り迎えのちょっとした時間しかありません。
それでも「今日は時間がありそうだな」と感じたら、積極的に話しかけに行きましょう。ちょっとしたことでも、毎日くり返すことで保護者から信頼されやすくなりますよ。
まとめ
保護者とのトラブルをうまく対応するコツについて、紹介してきました。
保護者と保育士では、子どもに対する思いが違います。ただし「大切に、のびのびと成長してほしい」という気持ちは同じです。それでもお互いが気持ちをぶつけ合っていては、必ずトラブルが起き続けます。相手の気持ちや立場を考えることで、初めて本当の信頼関係を結ぶことができるのです。
積極的にコミュニケーションをとれば、保育士と保護者は「一緒に子育てをする仲間」になれます。どうしても困ったら、園長や主任にも問題を共有して、一緒に考えていきましょう。
ぜひこの記事を参考にして、夢の保育士ライフを過ごしてくださいね。